
こんな世の中だ、あんただってそんくらいわかってるでしょうが。細かいことは言いっこなし。ネ? 世間じゃ金がねえ仕事がねえ未来がねえと騒いじゃいるが、そんなあたりまえのことに声をあらげてる暇があるんならもっと大事なことを考えたらどうだい。人間なんだから、そりゃ躓くことだって、悩むことだって、立ち止まっちまおうかって考えることも、だれにだってあるさ。俺たちはそれをときどき「弱さ」だとか「未熟さ」みたいなことばで片づけちまうが、でもそれはちょっと違うんじゃねえか。むしろ物事に躓かず、何事にも悩まずに、なんの苦もなく一直線に生きてこられるやつなんて人間じゃねえ、それはただの化物だよ。想像してみねえな。どんな性格の人間だって、自分にとっていい出来事ばかりがつづけば、わかっていてもすこし天狗になっちまうだろ。俺はすごいんだ、私には才能があるんだって、そう思っちまうだろうが。そんなときに人間てえのは学習しねえんだ、できねえんだよ。ある映画監督が言ってたっけ。無能な俳優のひとつは、自分を完璧だと信じてるやつだって。その通りさ。自分を完璧だと信じこんでる野郎に、まわりがあーだこーだ言ったって、そりゃ耳を貸すわけねえだろ。そいつがほんとうに完璧なら話はべつだが、そんなやつはこの世にいるわけねえし、またいたとしても、どこにも欠陥のねえ人間なんて、なんだか面白くねえじゃねえか。
あんたはそう思わないかい?
間違うことは苦しいよ。そりゃ恥もかくだろうし、辛い仕打ちをうけて、奥歯噛みしめて、歯茎から血が出ることだってあるだろうよ。こんな人生、きょうで終いにしちまおうって、そう思う日だって俺たちの人生には掃いて捨てるほどあらあな。いろんな頭をもった人間たちが、てめえたちの考えに従って生きてる世界だ、そりゃだれかと衝突して、いやな思いをすることだってあってあたりまえなのよ。でもな。そんなときにこそ、俺たちは成長できるんじゃねえのかい。間違ったとき、上手くできなかったとき、自分は弱く未熟な存在だと痛感したときにこそ、人間てえのはなにかを学べるんじゃねえのかい。だからさ、俺たちは迷ったっていいんだよ。なにを困ることがあるんだ。てめえの人生だ、てめえで死ぬほど苦しんで、ほかのだれよりも豊かな人生にすりゃ、それでいいんじゃねえのかい。俺もあんたも、まだまだこれからだ。まだまだ生きるし、まだまだ学べる。たまに迷って、道の向こうが見えなくなって、立ち止まりそうになったらここに来なよ。そして存分に見てやってくれ。
この手はいつだって、真面目にまっすぐ伸びてるだろうから。
posted by 札幌支部 at 20:06
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裏部長の日記